Aquatic Plant Invasion《湖沼生態系》 伊東明彦・石山 隆
近年、世界各地の湖沼、例えば、ビクトリア湖(東アフリカ)、ジェベルオーリア湖(スーダン)、プロコボンド湖(スリナム)、その他、北米、南米、日本の湖沼を含むアジア各地において、工場排水、生活排水、化学肥料が雨季に河川、湖沼へ流入し、栄養塩による富栄養化現象が起きています。その結果、水質の富栄養化に適応した水生植物、特にホテイアオイ(Water Hyacinth, Eichhornia crassipes,)の異常繁殖が問題になっています。
湖沼への水生植物の異常繁殖は次のような環境への影響が考えられます。 湖水への酸素供給の減少、湖水への光の透過の減少、また産業への影響としては、水生植物による漁業過程の物理的妨害による漁業損害、船舶の航行妨害、潅漑システムへの雑草の侵入による損失(水路封鎖、水損失、栄養分の競合、魚類の減少)などが挙げられます。
ビクトリア湖周辺では1980年に入り、湖の周囲の森林伐採、沼沢地を乾燥させ、茶、コーヒー、砂糖のプランテーションを開発しました。それによる化学肥料が雨季に河川に流入し、湖沼に栄養塩を供給することになります。さらに湖周辺の人口増加による家庭雑排水が湖に流入し水質の汚濁が上昇しました。その結果、魚類(ナイルパーチ、その他希少魚類)が減少して、生態系の変化(貧相な生物相)が起きています。ホテイアオイの劇的な増加は地域の環境に深刻な問題をもたらしています。
下図はPALSARデータ(HH)によるビクトリア湖キスム湾のホテイアオイの分布の解析結果(2007.3.13)です。ホテイアオイの群落がキスム湾の湖岸から沖合に向かって拡散していることがわかります。