乾燥地・半乾燥地生態系(石山 隆)

 近年,中国新疆ウイグルのタクラマカン沙漠を取り巻くオアシス周辺では荒漠化が進行している。荒漠化の原因は完全には解明されていないが,気候の変化と人間活動,例えば過放牧,過伐採,農地の拡大などの複合的な作用が原因であることは間違いない。

 この地域では河川流域の森林や草地,荒漠地を農地に転用し,経済農産物としての綿花栽培に力をいれた。また水稲,小麦,玉蜀黍などの農作物の一大供給基地としての役割もはたしている。1960年代初頭から灌漑水路の整備に力をいれたが,一方では排水路が未整備のため,地下水位が上昇した。

 その結果,農地への塩類集積とそれによる農地の放棄が,荒漠化へと移行した。荒漠化によりダストストームの発生も増加し,またダストの一部は東アジアを経由して日本にも到達する。

 タリム河には灌漑水路から塩分濃度の高い排水が流入し,水質の悪化が進んでいる。さらに上・中流域に無計画ともいえる多くの貯水池が建設されたため,下流域において断流が起きている。

 それらの結果,河川とその周辺では生態系が悪化した。特に胡楊林や貴重な動植物の減少は深刻な問題である。

 

 《補足》乾燥地域,特に沙漠とその周辺の環境変動を調べるためにはRSは不可欠である。理由は,(1)気象条件などの調査環境が厳しい,(2)調査地域が広大である,(3)長期時系列な調査が必要,(4)政情の不安定な地域が多く,現地調査が厳しい。

 

A long-term change of the land cover around Pishan oasis in southern edge of Taklimakan Desert derived from satellite data (1975-2006). It is found that indicating decreases in farmlands in the downstream region.